京の彩り・染と織

室町から桃山時代の染織②-繍箔

2016年03月

桃山時代を代表する染織品の一つに繍箔(ぬいはく)があります。これは刺繍と摺箔(すりはく)で装飾したもので、刺繍の重厚感と金銀箔の華やかさを備えた豪奢な染織品です。

桃山時代には、ポルトガルやスペインなどとの交易が盛んに行われ、日本にやってきた南蛮人たちは日本のことを様々に書き残しました。1594(文禄3)年に来日したスペインの貿易商アビラ・ヒロンは、20年にわたって主に長崎に滞在し、『日本王国記』という書物を著しました。そこには、日本人の衣装について「こういう着物、つまり衣服はまことに立派なものであるが、立派な着物というものは、すばらしい布地にきれいに色どりして、金をちりばめ、美々しく刺繍をほどこした絹の布地でできている」と書かれています。当時日本に来ていた南蛮人にとっても、色彩豊かで豪華な服飾はとても印象深いものだったようです。

桃山時代の刺繍は、ほとんど撚りのかかっていない絹糸を用いてふっくらと仕上げられています。京都国立博物館に所蔵されている「白練貫地草花文様段片身替小袖」(重要文化財)は、小袖の背面が四つの区画に分けられ、区画のなかに春の梅、夏の藤、秋の紅葉、冬の雪持笹が刺繍で表現され、刺繍のすきまに金銀の箔が摺られています。一枚の小袖に四季を象徴する植物がすべて表現されているのです。季節を美しく彩る植物がびっしりと刺繍されている文様からは、満ちあふれるような生命力が感じられます。

武将たちが権力を求めて躍動していた時代、人々は豪奢で美しい染織品を身につけることで現実社会での力を誇示しました。一方で、豊かな生命力に対する憧憬の思いを衣装の文様表現に託していたのです。

 

京都華頂大学教授 馬場まみ

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