京の彩り・染と織

幕末・維新期の染織③-「衣かへ」と夏の衣装

2017年05月

 木々の緑が目にまぶしく、夏の近いことを実感する季節になりました。古来、人々は生活のなかで暦の節目を大切にし、衣服も材質や色彩で季節の移り変わりを表現してきました。平安時代の貴族は、4月1日と10月1日に衣替えを行っていました。中世の武家社会で衣替えは細分化され、江戸時代に引き継がれました。

 江戸時代後期に著された『俚言集覧』(りげんしゅうらん)という辞書には、「衣かへ」について以下のように書かれています。

更衣四月朔日十月朔日を云 今江戸の御定ハ四月朔日より五月四日迄袷小袖 五月五日より八月晦日ひとへ帷子麻布なり 九月朔日より同八日迄袷小袖 九月九日より三月晦日迄を綿入小袖なり

 江戸時代の更衣の風習は、旧暦の4月1日から5月4日まで袷小袖、5月5日から8月末日まで単衣や帷子、9月1日から8日まで袷小袖、9月9日から3月末日まで綿入小袖を着用するというものでした。

 「縹絽地(はなだろじ)風景歌文字模様単衣」(メトロポリタン美術館所蔵)は、糊で防染して文様部分を白くする「白上げ」という技法と刺繍、摺匹田で装飾されています。絽の生地を藍で染色した涼しげな夏の衣料です。文様には、山並みや草庵などの風景と、松、紅葉、藤、たんぽぽなどの四季の植物が描かれています。さらに、肩に「鶴の子は千代をことふくはななれや」という吉祥を感じさせる歌文字がみられます。

 江戸時代には染めや織りの技術が発達し、様々な生地に友禅染、白上げ、刺繍、鹿の子、摺匹田などの技法で装飾した華やかな衣装が製作されました。そして、儀礼の場での装いの形や季節による更衣の風習などの服飾文化が作りあげられました。

縹絽地風景歌文字模様単衣

「縹絽地風景歌文字模様単衣」(メトロポリタン美術館所蔵)

京都華頂大学教授 馬場まみ

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