京の彩り・染と織

幕末・維新期の染織①-衣桁飾り

2017年02月

 江戸時代に、小袖は刺繍や鹿の子、友禅染などで華やかに装飾されました。こうした小袖を衣桁に懸け部屋の飾りにすることも行なわれ、これを「衣桁飾り」と呼びました。衣桁(衣架)に晴の装束を懸けて部屋を飾ることは平安時代の貴族の文化にみられ、江戸時代には裕福な町人たちが衣装を飾るようになりました。
 江戸時代の衣桁飾りの方法については、様々な書物に記述がみられます。江戸時代半ばの『婚礼仕用罌粟(けし)袋』(1750年)には衣桁2基の飾りの図が載せられていて、婚礼時の「うへうへ(上々)の錺(かざり)は小袖の品、幸菱(さいわいびし)あや織物、縫箔、地白、地紅、地黒」であると記されています。また、「衣桁一つに小袖五つづゝ十を錺るべし」とも書かれています。衣桁飾りは婚礼以外でも行われ、幕末の『女有職莩(みばえ)文庫』(1866年)には春の衣桁飾りについて次のように説明されています。
  第一、かのこ(鹿の子) 青地春
  二、ぼたん(牡丹) 赤地夏
  三、ぬいはく(繍箔) きいろ 中央 土用
  四、菊紅葉 地白秋
  五、ゆきのなみ 地黒冬
 春は青、夏は赤、土用は黄色、秋は白、冬は黒と、季節にあわせた五行の色の小袖を用い、春には青色の小袖を衣桁の右端に懸けました。上層の町人たちは、平安時代に公家が行った衣桁飾りを自分たちの生活に取り入れ、季節に応じた小袖の飾りを楽しんでいたのです。
 江戸時代には染めや織りの技法も発達し、様々な趣きの小袖が作られました。2017年は、大政奉還から150年です。本年のコラムは、幕末から明治初期の染織文化をみていきます。 

『婚礼仕用罌粟袋』(国立国会図書館)
『婚礼仕用罌粟袋』(国立国会図書館)

京都華頂大学教授 馬場まみ

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