京の彩り・染と織

近代の染織⑥-ゑびす講売出し

2018年11月

 京都ゑびす神社の祭礼の一つに、10月20日に行われるゑびす講があります。ゑびす講では、社伝によると、江戸時代に呉服商が旅の無事と商売繁盛の御礼参りをするようになり、近代には呉服店による売出しが盛んになりました。当時の新聞には、「ゑびす講にて各呉服店ともに両日とも非常に雑踏を極め販売高も一層増加を為したるが如し」(『京都日出新聞』1900年10月21日)などの記事がみられ、多くの人出で賑わっていたことがわかります。
 1900年を過ぎる頃から売出しはますます盛大になり、呉服店や百貨店のショーウィンドーの飾りも華やかになっていきます。新聞には毎年のように売出しの記事が掲載され、商品の豪華さを伝えています。

上着は紋錦紗縮緬に色の棒縞金糸縫取で下着は羽二重友禅にヒユーザン式洋花の模様、被布は山繭入紋錦紗の縫取りで襦袢は紋縮緬友禅に紅葉の模様、…(『京都日出新聞』1914年10月15日)
全体に落ついた感じのうちに未来派風なバツクも妙に似つかはしくグリーン地にバラを図案化した着尺、表現派好みの粋な羽二重の帯、目もさめるやうな友禅の丸帯、…(『京都日出新聞』1924年10月11日)

 呉服店のゑびす講売出しが盛んになると、他業種も同じ時期に売出しをするようになりました。地域が一体となった宣伝もみられ、「何と云つても四條、寺町かけての競争気分の濃厚さはさすがに目ざましい。町の辻々に張られている広告ビラ立看板に赤黒白で肉太に十五日より売出しと書かれてゐるのが殊更に目をひいて」(『京都日出新聞』1924年10月15日)という状況でした。繊維商が共同で大きな広告を出すこともあり、寺町松原にある西川甚五郎商店も名を連ねていました。
 明治維新後の京都では、技術革新と新しいデザイン展開で近代的な染織品が製作され、百貨店などの流通業も発展しました。ゑびす講売出しの様相をたどると、高級絹織物業、繊維業の町としての京都の活気が伝わってきます。

6ゑびす講広告1921.10.14『京都日出新聞』(1921年10月14日)

京都華頂大学教授 馬場まみ

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